この分野は、線がよく動く。去年まで棚にあったものが今年には消えていて、その理由を誰も説明してくれない。だからここに書いておく。何がいつ規制されて、その判断に科学的な裏付けがあったのか、そして誰がその線を引いているのか。
先に立場を書いておく。当店は法律を守る。線が引かれればその日に棚を下げる。ただし、引かれた線が妥当だったかどうかを黙って飲み込むこととは、別の話だ。
ページの上に更新日を置いてある。この文章は古くなる。日付を見て、古ければ疑ってほしい。
| 2023年12月 | 大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法の改正が成立、公布 |
|---|---|
| 2024年5月 | いわゆるO系カンナビノイド15種類が指定薬物に |
| 2024年12月12日 | 改正法が施行。部位規制から成分規制へ転換、使用罪が新設 |
| 2025年10月 | 厚生労働省がCBNを指定薬物とする省令案を公表、意見募集を開始 |
| 2026年3月18日 | 省令公布 |
| 2026年6月1日 | CBNが指定薬物として施行 |
ここが一番大きな転換点で、しかもあまり理解されていない。
それまでの大麻取締法は部位規制だった。花穂と葉は違法、茎と種子は合法。植物のどこから採ったかで白黒が決まる仕組みで、だからCBD製品は「茎由来だから合法」という理屈で流通していた。分子として同じものでも、由来が違えば扱いが違う。よく考えると奇妙な法律だった。
2024年12月12日、これが成分規制に変わった。どこから採ったかは関係なく、Δ9-THCが基準値を超えているかどうかだけで判断される。同じ日に、大麻の使用罪も新設された。
| 油脂・粉末 | 10ppm(0.001%) |
|---|---|
| 水溶液 | 0.1ppm |
| その他の製品 | 1ppm |
ppmは百万分率で、1ppmは百万分の1。数字だけ見てもピンとこないので、水の一滴に換算してみる。水の一滴はおよそ0.05ミリリットル。
1ppm ── 50リットルの水に、一滴。
0.1ppm ── 500リットルの水に、一滴。家庭用の浴槽が満水で200リットル前後だから、浴槽2杯半に一滴。
重さで言い直すと、1ppmは1トンの製品に対して1グラム。0.1ppmなら10トンに1グラムだ。大型のタンクローリー1台分の中に、角砂糖の3分の1が混じっていたら基準を超える。
この水準を検出し、証明し続けることが、この分野で商売をする条件になった。分析コストは跳ね上がり、それを負担できない事業者は退場した。転換の意味は、実はここにもある。
2024年5月、THCVO、THCBO、HHCPOなど15種類が指定薬物になった。いわゆるO系、アセテート体と呼ばれる一群だ。
これらは自然界に存在しない。天然のカンナビノイドを化学的に修飾して作られた半合成品で、ヒトでの使用実績も、安全性のデータも、ほとんど何もないまま流通していた。しかも構造上、より強い作用を狙って設計されている。
未知のものを未知のまま流通させない。その判断は理解できる。この規制に文句を言うつもりはない。
HHC、HHCH、THCHと続いた規制も、程度の差はあれ同じ系統の話だった。人が作り出した新しい分子に、線が引かれていく。それがこの数年の風景だった。
そして、ついにCBNに線が引かれた。
2026年6月1日、CBNが指定薬物になった。厚生労働省は、精神毒性を有する蓋然性が高く、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として認められた、と説明している。
ここから先は、科学の話をする。
カンナビノールは、Δ9-THCが酸化して生じる分解物だ。合成品でも半合成品でもない。大麻草に元から含まれていて、しかも古くなった大麻ほど多く含まれる。THCが時間とともに壊れて、CBNになるからだ。放っておいても、勝手にできる。
純粋な形で単離された最初のフィトカンナビノイドでもある。100年以上前から知られている、この分野で最も長く研究されてきた分子のひとつだ。誰かが去年作り出した新規物質ではない。
CBNはCB1受容体に対する弱い部分作動薬とされる。親和性はΔ9-THCのおよそ10分の1、作用の強さもおよそ10分の1程度と報告されている。むしろCB1よりCB2受容体への選択性が高い、という報告が複数ある。
そして通常の製品に含まれる量では、確実な酩酊は生じない、というのが現在の一般的な理解だ。
THCの10分の1の親和性しかなく、CB1よりCB2に寄っていて、通常量では酩酊しない。100年前から知られていて、大麻草に元から含まれている。この分子について、精神毒性を有する蓋然性が高い、と判断された。
CBNを擁護するだけでは、この文章は嘘になる。だから不利な事実も書く。
CBNのヒトにおける安全性データは、実のところ十分ではない。薬理学的なプロファイルが未だ十分に特徴づけられていない、と指摘する総説もある。弱い結合はゼロの活性を意味しない。だから完全に無害だと主張するつもりはない。
ただし、データが足りないことと、精神毒性が高いことは、別の話だ。
データが足りないなら、取りうる手段は他にもあった。含有量の上限を設ける。表示のルールを定める。販売ガイドラインを作る。年齢制限をかける。実際に業界団体は、リスクに応じた管理を検討するよう求めていた。事故件数や事例の内容が明らかにされておらず、CBN摂取と健康被害の因果関係が立証されたケースは確認されていない、という指摘もあった。
厚生労働省が選んだのは、それらを飛ばして、製造・輸入・販売・所持・使用のすべてを禁止することだった。持っているだけで罪になる。指定薬物の罰則は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、業として行った場合は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金とされている。
アメリカでは、CBNは連邦レベルの規制物質に指定されていない。ヘンプ由来でTHC濃度が基準内であれば、睡眠用途の製品として普通に流通している。DEAはCBNとTHC系化合物を区別して扱ってきた。
ヨーロッパは国によって分かれる。CBGやCBNを許容している国がある一方、イギリスのようにCBNを規制物質としている国もある。一枚岩ではない。
だから、世界中で合法なのに日本だけが、という話ではない。ただ、所持しているだけで刑事罰の対象になる、という水準の扱いをしている国は限られる。日本が選んだのは、取りうる手段のなかで最も重い部類のものだった。
それまで何ら規制されていなかった成分が、省令案の公表からわずか数か月で全面禁止に至った。業界団体が反対意見を出し、パブリックコメントの期間が延長され、施行時期が一度未定に戻り、精神毒性の評価データが検討材料に追加され、それでも方針は変わらなかった。
厚生労働省がどのような調査・検証を実施したのか、その手法や結果の詳細は公表されていない、という指摘が出ている。
なお、他に代替できる治療法がない難治性の疾患または障害の診断を受けた患者については、所定の手続きを経れば継続使用が認められる。難治性てんかんなどで実際に使われていた実態があったためだ。この例外が設けられたこと自体が、CBNが単なる嗜好品ではなかったことを示している。
ここはあまり知られていない。
指定薬物は、国の薬事審議会指定薬物部会を経て厚生労働大臣が指定する。これが本来の道筋だ。だが、それとは別に都道府県知事が独自に指定できる制度がある。
東京都には「東京都薬物の濫用防止に関する条例」があり、その第12条に基づいて知事が独自に薬物を指定できる。指定されれば、都内での製造・販売・所持・使用・広告が禁止される。同様の条例を持つのは、東京都を含めて25の都道府県にのぼる。
直近では2026年、1S-LSDなどが知事指定薬物として指定され、都内での取り扱いが禁止された。国の部会を経ずに、告示から短期間で線が引かれている。
物質そのものの是非をここで論じるつもりはない。記録しておきたいのは手続きのほうだ。国の審議を待たずに、地方が先に禁止できる。そういう仕組みが動いている。
東京都はこれまでに241の薬物を知事指定薬物として指定してきた。そして、そのすべてが後に国の指定薬物または麻薬に指定されている。都が先に線を引き、国が後から追認する。そういう構造になっている。
ここが一番重い数字だ。東京都が公表している内訳によると、令和6年度までに新規指定した232薬物のうち、144薬物が「国内流通未確認」の段階での指定だった。
半分以上が、日本国内で流通が確認される前に禁止されている。誰も売っておらず、誰も使っていない段階で、線が引かれる。
都はこれを「国内事前規制」と呼んでいる。指定にあたっては東京都薬物情報評価委員会が事前に危険性を評価し、知事に報告する仕組みにはなっている。何の手続きもなく指定されるわけではない。
それでも、国の部会とは別の系統で、より速く、流通実態がなくても線を引ける仕組みが動いているという事実は変わらない。そして都は指定した薬物の情報を厚生労働省と他の道府県に提供し、広域的な規制につなげている。
さらに、薬機法第76条の6の2には「告示禁止物品」という制度がある。指定薬物である疑いのある物品について、成分の特定を待たずに製造・販売・所持等を禁止できる。禁止が解除されるまでの間、購入も譲受も使用もできない。
成分が確定していなくても、物品の単位で止められるということだ。
予測はしない。当てられないし、当てようとすれば煽りになる。
ただ、構造だけは言える。2024年12月の改正で規制の軸が成分に移った。CBNの件で、大麻草に元から含まれ、100年前から知られていて、THCの10分の1の作用しかない分子であっても指定薬物になり得るという前例ができた。そして知事指定という、より速い系統が並行して動いている。
この3つが揃った以上、次に何が来ても不思議ではない。
2026年9月現在、当店の製品に含まれている主なカンナビノイドはこれだけだ。
| CBX | 主成分。2026年9月現在、指定薬物として規制されていません |
|---|---|
| H4CBH | 主成分。2026年9月現在、指定薬物として規制されていません |
| CRDP | 主成分。2026年9月現在、指定薬物として規制されていません |
| CBG | 原料に含まれます。規制されていません |
| CBD | 原料に含まれます。規制されていません |
リキッドの充填にはCBG-CRDを使っている。希釈液は使っていない。CBGとCBDは、この分野で最も長く研究され、最も広く受け入れられているカンナビノイドで、日本でも海外でも規制対象ではない。
すべて国推奨機関KCAで成分分析を通し、正規通関で入れている。
線が動けば、その日に棚を下げる。そしてここを更新する。それがこの店にできることの全部だ。
もし今あなたが何かを持っていて、それが規制されたなら、期日までに使い切るか廃棄することになる。施行前に適法に買ったものであっても、施行後に持ち続ければ問題になり得る。CBNのときは、厚生労働省が保有製品の廃棄を求め、廃棄にあたっては盗取されないよう適切な方法をとるように、とまで案内していた。そこは覚えておいてほしい。
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